《MUMEI》
拉致
「祐也、ちょっと来て」

「え、わ!」


月曜日、登校すると、志貴にいきなり拉致された。


(ここは…)


そこは、以前奈都について尋問された音楽室で


中には、頼と厳がいた。


「…何?」


ピリピリした空気は、土曜日


奈都のいじめについて聞いた時と雰囲気が似ていた。


「朝倉奈都について」


志貴が冷たい口調が言った。


「朝倉が祐也に近付いたのは、俺が振ったから」


厳の口調も冷たい。


「そして、俺が馬鹿にしたから」


頼の口調は…いつも通り、冷たい。


「それと、俺に何の関係が?」

「だから、自分を振ったり馬鹿にした二人を見返したくて、祐也に近付いたのよ」


志貴が、ため息をつきながら説明した。


「見返す?」

「「俺が、祐也を好きだから」」


珍しく、双子らしく厳と頼の声が揃った。


「あ、俺は人間としてだから」

「俺は、どうとっても大丈夫」


(…やっぱり、一瞬だけか)


慌てる厳と、にやける頼を見て思った。


「そんな事に祐也を利用するのが許せなかった」

「「俺も」」


三人の気持ちは一つだった。

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