《MUMEI》
旅館‥?
「──済みません、誰かいませんか‥?」





戸を、

叩いてみたけれど。





──返事どころか、

物音一つしない。





「あのー‥?」





いない‥

みたいだ。





仕方ない‥

他を‥





「──迷われたんですか?」

「‥ぇ」





この家の子だろうか‥。





「──どうぞ、お入りになって下さい」

「あの‥君は──」

「私は、この旅館の仲居をしている者です‥」

「旅館‥?」





この古ぼけた屋敷がか‥?






僕は‥

半信半疑だった。





どうみてもここは、

旅館になど見えないのだから‥。

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