《MUMEI》
オクトパエス
ライムは手足に力を入れてみた。ダメだ。力では到底かなわない。
オクトパエスは無抵抗のライムに迫った。
「ライム。もしも俺のお嫁さんになればなあ、オールダイパン様も酷いことはしないさ。しかしライムを助けるための偽りの結婚とバレたら、俺までヤバいぜ」
ライムは下から睨んでいた。オクトパエスは構わず話を続ける。
「オールダイパン様は誤魔化せても、あの他化愚魔は騙せない。だから証拠が必要だ」
「証拠?」
「既成事実だよ」
いよいよ危ない。ライムはもがいた。
「夫婦の契りを交わしたとなれば、認めてくれるだろう」
「言ってる意味がわからない」
「わからないなら教えてやる。こういうことだ」
オクトパエスはライムの水着をあっさり剥いでしまった。
「やめろ!」
強気のライムだが、上に乗られ、襲われかけると慌てた。
「待て、待つんだ!」
「命の恩人の俺を殺そうとしたおまえに、情けをかける理由が見つからない」
「だれが殺そうとしたって?」
ライムが赤い顔で睨む。オクトパエスは攻撃をストップした。
「何、わざと浅く切ったのか?」
「想像に任せる」
「そういう生意気な態度取ると、愛撫しちゃうぞ」
「やめろ!」
これ以上の脅し文句はない。ライムは素直に答えた。
「オクトパエスには二度も助けられている。だから、殺せなかった」
オクトパエスは満面笑顔だ。
「何だ、ちゃんと恩を感じてくれていたのか?」
「強飛がオクトパエスを殺しに行こうとしたときも止めた」
「ほうほう。じゃあ俺にとってもライムは命の恩人というわけか?」
「別に」
ライムは横を向いた。
「ますます惚れたぜライム。じゃあ俺たち、うまく行くな」
「はっ?」
「この体いただくぜ」
「ダメだ断る」
「なら愛撫しちゃうぞ」
「そんなことさせない」
「させないって、されたらどうしようもないじゃん」
ライムは緊張した。何とか逃れたい。屈辱はもう味わいたくない。愛撫されたら、情けないが勝ち目はない。
「待てオクトパエス」
「命令か?」
「違う」
「待ってほしいときは待ってって、かわいく女の子らしく哀願しないと、愛されちゃうよん」
(バカかこいつ)
ライムは怒りで震えた。人を辱めて楽しむ究極のサディスト。
嘘か誠か。悪魔に愛撫されて昇天したら消滅してしまう。服従させるための嘘かもしれない。しかし誠であれば怖い。
「ライム。観念して俺のお嫁さんになれ。おまえを助けたい純粋な恋心だよ」
「嘘をつくな。だったら、こんな卑怯なまねはしないはずだ」
オクトパエスが邪悪な笑みを浮かべた。
「交渉決裂だな」
ライムは身構えた。オクトパエスは今度こそ容赦しないかもしれない。
「ライム。おまえが俺のテクにどこまで耐えられるかが楽しみだ」
来た。ライムは唇を結んで耐えた。容赦ない。弱点を知り尽くしている悪魔のテクニック。
ライムは腰を浮かした。
「あっ…」
「ライム。もちろん改心して俺のお嫁さんになるなら許してあげるぞ」
「だれが」
「そういう生意気言うなら、こういうところ攻めちゃうよ」
「あああん!」
ライムはたちまち悶えた。
「待て、やめろ、やめろう!」
真っ赤な顔をして暴れるライム。オクトパエスは容赦しない。
「さあどうするライム?」
「くううう…」
両目を閉じて白い歯を食いしばるライムが美しい。オクトパエスは悲しい目をして囁いた。
「さらばだ、ライム」
「あああ、あああん!」
(嘘、ダメかもしれない。耐えられないよ、どうしよう……)
「待てオクトパエス話し合おう!」
「時間稼ぎなんか無駄だぞライム」
「違う。やり方が卑劣過ぎる」
「ライム。名は体を表すという諺を知らんのか。俺の名前はオクトパエス。読んで字のごとく、女の子が困り果てる姿を見るのが趣味な悪魔だ。ククク」
「貴様…あああん、やめろ!」
「降参か?」
ライムは弱気な表情でもがいた。

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