《MUMEI》
早退
「だから、今日は一人で帰らないといけなくて…」

「友達は?」

「いません」

「この事を知ってるのは?」

「祐也先輩…だけ…です」


(本当に、信頼できる人間誰もいないんだな)


知り合ってほんの少ししか経たない俺に頼るくらい、奈都は孤独なようだ。


「先日は、本当に申し訳ありませんでした。お願いします。

今日だけでも、…一緒に帰って下さい。

お願いします…」


必死で頭を下げる奈都に、俺は


同情、した。


「俺、今日は早退する予定なんだけど」

「それでいいです!お願いします」


こうして俺は、予定通り守に荷物を持ってきてもらい、午前中で早退する事にした。


「志貴は、どうしてる?」

奈都の話から、志貴が奈都のストーカーとは思えなかったが、一応守に訊いてみた。


(大体、毎晩電話は無理だし)


修学旅行前日、志貴は俺と電話で話したし、三日目の夜は一緒にいたのだから。


「んー? 真面目な顔してメールしてたけど、それがどうした?」

「いや、別に。ありがとう」



(まさかストーカーに指示とか出してないよな?)


そんな事を一瞬考えて、俺は奈都と学校を出た。

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