《MUMEI》

「…お前はどの場面まで見とる?」

「は?」

「悪夢じゃよ。お前がいつも見ている…。」

「あの、その前に一つ聞いてもいいですか?」

「わしが何故その事を知っているのか…か?」

「はい。」


『全てお見通し』と言わんばかりの老婆の強い目線に、貴士はたじろぎそうになりながら、しかしそれをグッと堪える。


「お婆さん、何か知っているんですか?」

「…あぁ。」

「じ、じゃあ!」

「そう焦るな。…とは言っても時間がない。」

「時間がないってどう…」
「焦るなと言うたじゃろ!いいからわしの質問に答えろ!
話はそれからじゃ!!」

「は、はいぃぃッ!」


カフェの時と同様、またも凄まじい剣幕で、カウンターに身を乗り上げてきた。


貴士の悲鳴染みた返事が、静かな店内に響きわたった。

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