《MUMEI》
徒歩を選択
「徒歩って久しぶりだな」

「私もです」


駐輪場で、『早退しといて、元気に自転車乗るのはヤバいかなぁ』と呟く俺に


『うち、学校から徒歩十分です』


奈都がそう言ったから、俺達は歩いて朝倉家まで向かっていた。


夜は暗いから避けている細道も、今は通れるから、バイクの被害も回避できそうだ


俺も、奈都もそう思い、油断していたと思う。


「あの公園を過ぎたら、すぐですから」


小さな公園が見え、奈都が笑顔を見せた。


しかし、その笑顔は


公園の入り口にあるバイクを見て、固まった。


「これ、もしかして、ストーカーの?」


青ざめる奈都の表情が、俺の質問を肯定していた。


(あれ? でも、これって…)


俺は、これと同じバイクをつい最近見た事があった。


「せ、先輩。もう行きましょう…」

「あぁ、そう…」


「…せっ…」

「…め、だよ…」

「… … ん、で…」

「それは…」


(ん?)


その時、公園の中から聞いた事のある声が


いくつも、聞こえた。


「先輩、あれ」

「ん?」


奈都が指差す方向に目を向けると、見知った顔が二つこちらに向かって歩いてきていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫