《MUMEI》
サイレン
それを拾って見てみると、こう書かれてあった。
「目標:一等を勝ち取ること」

それ以外には何も書かれていない。
「意味わかんねぇよ」
一人そう呟くと、目の前に影が落ちた。

ギクッとして顔をあげるといつの間に近づいたのか、ナイフを構えた中年の女が今、まさに彼を刺そうとしているところだった。
「やっ!あぶね!」
彼は間一髪のところで横に転がる。
女は突然目標を見失ったため、バランスを崩して倒れ込み、そのまま動かなくなった。
「お、おい?」

彼が恐る恐る近寄り覗き込むと、女は自らのナイフで胸を刺し、息絶えていた。
「……」
言葉もなく立ち尽くしていると、突然どこからかサイレンが鳴り響いてきた。

その音に、それまで奇声をあげながらお互いを攻撃しあっていた全員がピタっと動きを止める。

間もなく、いつの間にか日が傾いていた空の上から、爆音を響かせながらヘリコプターが飛んできた。
そしてぶら下げていた大きな荷物を彼らのほうへと放り投げた。

それと同時にヘリのスピーカーから場違いなほど明るい女の声が聞こえてきた。
「皆さーん。ご苦労様です。今日の活動はこれで終了でーす。
わかってると思うけど、もし今から明日の朝までのあいだに人を刺しちゃったりした人は、強制的に排除されちゃうのでそのつもりでね。
では、みんなで仲良く分け合ってお食事してくださーい。
では、また明日〜」
プツという音と共に声は消え、ヘリコプターが遠ざかっていく。

それを待っていたかのように、その場にいる全員が一斉にヘリから落とされた荷物へと走り寄っていった。
彼はその様子をただ呆然と眺めていた。

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