《MUMEI》
怒れない
「ちなみに朝倉さんのお母さんの車の修理費用と、怪我の治療費は、ちゃんと松木から出させるから。

事情もちゃーんと、私と頼と柊から説明させて頂くから」

「本当の事、言うのか?」


娘が俺の為に利用されたと知れば、あの母親は怒り狂うだろう。


「まぁ、そこはうまくやるから」

「あ、柊はただ立ってろよ」

「…俺、行かなくちゃだめ? そうだ、祐也を送らないと…」


「「その祐也の為に行くんだけど?」」

「行きます」


(頑張れ、柊)


俺は、三人を見送り、一旦学校に戻ってから自転車で帰った。


(そういえば、皆学校サボったのか?)


そして、俺は後日知る。


柊の通う明皇が創立記念日だった事


大蔵先輩が、昼休みと自習時間を利用して来た事


ついでに大蔵先輩が俺のファンクラブに入っていた事


頼と志貴が、皆勤をのがしてまで、俺の為に学校をサボってくれた事を


(怒れないじゃないか)


頼が果穂さんから皆勤を命じられていただけに


志貴が、皆勤にこだわっていただけに


俺を大切に想って行動したのがわかってしまい


俺は、怒れなかった。

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