《MUMEI》
レイカ
「でも、ここの連中はそれを信じて毎日必死で生き延びてるわけだ。一人でな」
タツヤの言葉に彼は首を傾げた。
「あんたは?信じてないのか?」
「俺は現実主義者さ。こんなことで金が貰えるとは到底思えねぇし。
とりあえず一週間で二人仲間が出来たのはラッキーだったぜ」
タツヤがここに一週間もいたことに驚きながら、彼はもう一人仲間がいるのかと尋ねた。
「おお、いるぜ。これがまたスッゲーやばい奴でさ。あーと、どこ行ったかな」
タツヤがキョロキョロと周りを探していると、「呼んだ?」と突然、彼の隣から声がした。
驚き、見上げるとすぐ隣に色白の整った顔立ちをした若い女が立っていた。
年齢は二十歳くらいだろうか。
「おお、呼んだ呼んだ。こいつ、新しく仲間にしたんだ。で、この美人さんがもう一人の仲間のレイカだ」
「これで揃ったのか」
レイカは全く感情のない声で静かに言った。彼の顔を見ようともしない。
「おう。次の時がチャンスだ」
「ちょっと待てよ。何しようってんだ?つか、仲間になるとも言ってねえ」
するとタツヤは眉を寄せて、何言ってんだとでも言うように大袈裟に溜め息をついた。
「お前な、せっかく俺達が仲間にしてやろうってのに、なんだよその言い草は。なあ?」
レイカに同意を求めると、「別に。あたしはどっちでもいい。こいつがダメなら他を探せばいい」という素っ気ない言葉が返ってきた。
「なんだよ、お前。ずいぶんえらそうだな」
彼はレイカを見上げて睨み付けた。
しかし、レイカは彼を無表情に見下ろした。
「お前もえらそうだ。ここでは一番下っ端のくせに」
「んだとぉ?」
彼が立ち上がると、即座にレイカは彼の腹部にパンチを入れた。
「ぐあっ!」
いきなりの攻撃をもろに傷口に受けてしまったため、彼は再びその場にうずくまった。
「相手の攻撃の前に相手の弱点を攻撃する。
ここで生き残る一番楽な方法。
この時間帯でラッキーだったな。昼間なら殺してた」
レイカはそう言うと、彼の横に静かに座った。
その顔にはやはり何の表情も浮かんではいなかった。
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