《MUMEI》
計画 1
「まず脱出のチャンスは次に新人が連れてこられた時だ。その時、車を奪う」
「どうやって?」
彼が聞くと、タツヤは自分を指差した。
「まず、おれが奴らの前に出て気を逸らす、そこでレイカが運転手を殺る。お前は後ろの奴をやれ」
「やれって殺せってことか?」
「嫌なのか?」
タツヤが片方の眉をピクッと動かした。
彼が何も言わないでいると、タツヤが「しょうがねえな」と頭を掻いた。
「ま、殺すまでいかなくともとにかく車から引きずり出せ」
「まあ、そのくらいなら任せとけ」
彼が頷くと、レイカが微妙に口元を歪めた。
彼は「なんだよ?」と睨み付けたが、レイカは冷たい視線を彼に送っただけだった。
「で、それを5秒でやってくれ」
タツヤが右手を広げて彼の方に向けた。
「5秒?なんで?」
「あそこの壁な…」
タツヤが示した方を彼も見る。
そこは、車が走り去って行った方角だった。
「あそこ、30秒で閉まるんだ」
「30秒」
「そう。車が入って来て新人を降ろすので遅くても約15秒。5秒で中の奴らを引きずり出して、10秒でこっから出ないと間に合わない」
「素早い行動と判断が必要ってわけ。あんたにできる?」
レイカが彼を見た。
「ああ。俺は素早い動きには自信があるんでね」
「頼りにしてるぜ?で、奴らを引きずり出したあと、俺が運転してこっから出る。
そっからは出たとこ勝負だな」

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