《MUMEI》 家路 (完結)さて‥ 荷物を纏めないとな。 「──?」 “ここ、もうすぐ取り壊される事になってるんです‥” 「──そうだったのか‥?」 “はい‥。でも私、ここから出られなくて‥。千寿さんが来てくれなかったら、危なかったんです” 「───────」 “だから‥ありがとうございます” ペコリ、 と椿が頭を下げた。 “──それで‥私本当に一緒に行ってもいい‥んですか‥?” 「ぁぁ、勿論」 僕が頷くと、 椿は安心したのか── 軟らかく笑った。 「行こうか──」 僕らは、 並んで家路に就いた。 これは噂だが‥ あの旅館は、 幽霊屋敷と呼ばれているらしい。 けれどもう、 その名前であの屋敷が呼ばれる事はないだろう。 その『幽霊』は、 僕と一緒にいるんだから。 ◇◇◇ 『幽霊屋敷』‐完結 前へ |次へ |
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