《MUMEI》
雑談
それから彼は、タツヤから食料を分けてもらい、ここに来てから初めての食事をした。
腹の傷は痛むが、動けないほどでもない。
彼の横ではタツヤとレイカが同じように食事をとっている。
周りにいる他の者達はすでに食事を終え、眠り込んでいる人がほとんどだった。
眠り込むと言っても、誰も横になっていない。
全ての人が背に壁をつけ、手にはナイフを握り、俯いて眠っている。
いつでも攻撃できるように、神経を尖らせているのだろう。
あれでは決して疲れは取れないだろうと彼は思った。
「この時間帯は誰も攻撃してこないってわかってんだけどな。あいつらはもう神経やられちゃってんだ。
下手に話し掛けたら即、やられちまう。気をつけろよ」
彼の視線の先に気付いたタツヤがのんびり言った。
「あんたは、どうやって生き延びたんだ?……やっぱ、殺しちゃったり?」
彼が聞くと、タツヤは「まあなあ」と応えながら、おむすびを口に運んだ。
「そりゃ、何人かは殺ったよ。別に好きでしたわけじゃないけど。
俺の場合はどうしようもない時だけ。でもあいつは違うぜ」
タツヤがレイカを見た。
「レイカは俺がここに来た時からもういたんだが、すごかったね。殺しまくり。俺も殺されかけたし。な?」
タツヤが冗談でも言うようにレイカに目線をやると、レイカは素直に頷いた。
「あれは、あんたが悪い。あの状況であたしの後ろから近づいて来たら、反射的に身体が動く。
でも、いいじゃない。結果、殺してないんだし。こうして協力してる」
「そーなんだけど。あれは怖かった」
彼が問うような顔でタツヤを見ると、タツヤは可笑しそうに笑いながら話してくれた。
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