《MUMEI》
三者面談のお知らせ
それは、俺の周辺が普通の状態に戻ったある日、担任が語った事だった。


その内容は、担任と保護者と本人の三人で、進路について語るというものだった。


これは、毎年あるが


去年は、俺の事情を知る担任が一年だからと、特別に保護者抜きで行ってくれた。


ちなみに、その時俺は果穂さんにスカウトされる前だったから『大学進学を目指す』と答えた。


吾妻高校は、専門学校の進学率が最も高く、四大進学は少ないから、担任はかなり喜んでいた。


『田中なら国立狙えるぞ!』


去年、担任はそう言った。

成績は、去年よりいいくらいだから、担任は今年も同じ進路をすすめてくるだろう。


(でもな〜、今年はな〜)


正直、俺は迷っていた。


高山家の人々と、嫌というほど濃く関わってるうちに


…情が芽生えてきていたからだ。


「どうするかな…」


(進学か、就職か)


三者面談までに提出する進路志望の紙を見つめて、俺はため息をついた。


「祐也、まだ決めてないの?」


俺と同じ位成績がいいのに、志貴は迷わず就職を選んでいた。

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