《MUMEI》
タツヤとレイカ 2
(殺られる!!)
両手で顔を庇い、目を閉じたとき、タツヤの横を風が通った。
ドサっという鈍い音が耳に届く。
恐る恐る片目を開くと、タツヤの前には二本の真っ赤に濡れたナイフを両手に持つ、涼しい表情のレイカが立っていた。
一瞬ボーっとしていると、レイカがチラっと顔だけ振り返り、微かに眉を寄せながら言った。
「何ボーっとしてんの?味方なら手伝って。動いてないと殺されるぞ」
この一言に、タツヤはムッとして(ああ、さっきはお前に殺されかけたよ)と心の中で皮肉を言いながら、立ち上がった。
それから二人は力を合わせているのかいないのか、タツヤは逃げ回ってたまに攻撃し、タツヤを追い掛けている奴をレイカが倒すといった協力体制で、向かってくる連中をとりあえず一掃したのだった。
辺りに死体の山が積み上がっていくと、わずかに残った連中が二人に(主にレイカに)恐れを成して隅っこへと逃げて行った。
それを確認して二人はその場にしゃがみ込み、改めて顔を見合わせたのだった。
これがタツヤとレイカの出会いである。
後で話を聞くと、レイカはタツヤの三日前にここへ放り出された。
そして、襲ってくる奴を容赦なく切り付けていたら、何故か全員から狙われるようになったのだと言う。
おそらく、レイカの冷酷非道な行動が、自然とここにいた全員の唯一共通の敵になったのだろうとタツヤはこっそり思ったが、レイカ本人はさっぱり気付いていないようだった。
とにかく、それから二人は話し合い、ここから出る計画を立てたという訳である。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫