《MUMEI》
決めた道
《それでいいんだな》

「うん」


その日の夜


俺は、果穂さんの誘いを受け、高校卒業後、高山家が経営する会社に就職したいと忍に告げた。


「…いいか? 忍」

《お前が決めたなら》


忍は反対せず、あっさり認めた。


「でさ、三者面談は来るのか?」

《当然》

「あ、あのさ。担任は進学すすめてくるけど…」

《任せろ》


(何をだ!?)


恐ろしくて口には出せないが…


《そう焦るな。ちゃんと平和的に解決してやる》


何もかも理解したように忍は言った。


その口調は、ものすごく楽しそうだった。


《それに、恋人同士なんだから、行かないとおかしいだろ。せっかく会える機会なのに》

「去年来なかったじゃないか」

《あれは、担任が来なくて大丈夫ってしつこく言うからだ》


(忍が恐かったんだろ)


去年、俺が入院中、忍は説明の為に一人で学校に行き、担任にも会っていた。


退院後、俺と会った担任は、忍の事を『ずいぶんしっかりした保護者だな』と言った。


普通に言えばほめ言葉だが


残念ながら、担任の顔色は悪く、声は忍に対する恐怖で震えていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫