《MUMEI》
俺の両親
「そういえば祐也はどっち似?」

「…え?」


俺はその瞬間、かなり困った顔をしたらしい。


すぐに守は真司に連れられ席に戻り


志貴も、さりげなく俺の側から離れた。


実は、一番今俺と席が近い拓磨は、珍しく俺に気を遣い、『今日、数学お前あたるぞ』と教えてくれた。


(お前もな、拓磨)


俺は、拓磨の気遣いを台無しにしないように、『ありがとう』とだけ言った。


(両親、かぁ…)


俺は、どっちに似てるか知らない。


旦那様も、忍も知らない。


『お前は女顔だから、訊かれたら、母親似だと答えておけ』


忍にそう言われたが、実際言葉にできなかった。


(まあ俺も、これで父親だったらびっくりだけど)


俺は、俺の女顔を自覚していた。


(でも、この色は父親似だよな、絶対)


母親が日本人だという事ははっきりしていた。


『父親は、…もし訊かれたら、アメリカ人とでも言っておけ』


(よし)


俺は、忍の言葉を確認し、気持ちを落ち着かせた。


そして、守に謝られる前に


「俺は、母親似。目だけ、父親似」


そう言って笑った。

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