《MUMEI》

『で?…生き残ったのは…お前一人か…?』



『…はい…一家では…。』



『あのお嬢(加奈子のこと)は無事か?』



『…はい…………無事です…。』



一瞬つかえたような、猪俣の言い回しに、柳沢が何かを感じとった。



『…他に……命を落とした者がおるんじゃの?………。』



『…………。』



『まさか……直美さんか……?』



今まで虚空に泳いでいた柳沢の視線が、真っ直ぐに猪俣を見つめた。

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