《MUMEI》
トラック
「で、今日、お前が来たってわけだ」
タツヤはそう言って彼の肩をポンっと叩いた。
彼はその手を何気ない仕草で退けた。
「じゃあ、それから今日まで誰も来なかったのか?」
「いんや、何人か来たけどよ。そいつらは、今ここには……」
「もういない」
タツヤが周りを見渡していると、レイカが応えた。
気がつくと二人共、もう食事を終えている。
彼は手に持ったおむすびを一気に口へ放りこんだ。
「やられちゃったのか」
モグモグ口を動かしながら彼が問う。
ふと視界の端に誰かが血を流し、俯せで倒れているのが映った。
ピクリとも動かない。
彼はウッとおにぎりを戻しそうになるのを水を流し込んで堪えた。
こんな状況だからこそ食べれる時に食べておかなければ。
彼はタツヤとレイカ以外は見ないようにしようと二人の近くに顔を寄せた。
そんな彼の様子など全く気にせずレイカは頷きながら言う。
「入って来たその日に全員殺された。根性のない奴らだったんだ」
「……根性の問題じゃないと思う」
相変わらず冷たい口調のレイカにジトっとした視線を送りながら彼は呟いた。
しかし、彼女は聞こえなかったかのようにプイと向こうを向いてしまった。
その時、突然周囲にドゴン!という音が響いた。
「なんだ?!」
彼が立ち上がり、周りを見渡すと、出入口がある壁が左右に開かれていくところだった。
壁が半分ほど開くと、一台のトラックが走って来た。
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