《MUMEI》
回収車
「あれは?」
呟く彼の声に、タツヤが応えた。
「回収車さ」
「何の?」
「見てれば分かる」
今度応えたのはレイカだ。
壁はトラックが入ると再び閉まった。

そのトラックは真ん中まで来るとエンジンを止め、中から六人の覆面黒服男が出て来た。

それぞれ手には銃を持っている。
そのうち二人は車の左右に立ち、一人は荷台に上がった。残り三人はそれぞれ別れて倒れている者の傍まで行く。
(回収って、ひょっとして…)
 彼は男たちの行動を見ながら思った。

男の一人は銃をそこら辺の息絶えた相手の頭に向け、引き金を引いた。

パン!という軽い音が辺りに響く。
同じように他の二人も、倒れて動かない相手に発砲する。
銃声が響き渡った。

数分後、銃声は止み、男たちは今度は自分が撃った相手を引きずりトラックの荷台へ投げ入れた。
荷台で待ち構えていた男は、その死体を落ちないように上手く重ねていく。

ズルズル、ドサ!ズルズル、ドサ!

そんな音を繰り返しながら男たちは死体を荷台へ積み上げていく。
 全部の死体を積み終わると、壁がまたゆっくり開いていった。

すると六人は素早くトラックへ乗り込み、猛スピードで走り去った。
「な、なあ!!あれって」
彼が振り向くと、二人は座ったままのんびりしている。
「見たまんま。死体回収車。一日に一度この時間に来る」
背伸びをしながらタツヤが言う。
「一日に一度?必ずこの時間に?」
「ああ」
「ああって。何だよ?何のんびり構えてんだよ?」
「ああ?何が?」
「いつ来るか分かってんだったらあれを奪えばいいじゃん」

タツヤはフウっと溜息を吐くと「まあ、落ち着いて座れよ」と片手で手招きした。
彼を横に座らせるとタツヤは小声で言った。
「あの連中みたか?ありゃ素人じゃねえ。ちゃんと、どっかで訓練受けてる兵隊だ。あんなの相手に勝てる自信あんのか?しかも六人、銃持ってるし」
「……ない」
素直に彼は答える。
「だろ?ちなみに死体に紛れ込んで脱出ってのも無理。それを防ぐためにわざわざあいつら死体の頭に一発撃ち込んでるんだからな」
タツヤは右手で銃の形を作り、頭に当てた。
「あの銃を奪えたら楽に脱出できるけどね」
ポソッとレイカが言う。その言葉に頷きながら、タツヤは腕を組んだ。
「ま、そうなんだけど。方法がなくてな。だから、今一番の脱出方法は、さっきの作戦なんだ。他のことは考えるなよ」
彼はトラックが出て行った壁を見ながら小さく頷いた。

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