《MUMEI》
満月
辺りはすっかり暗くなっていた。
空を見上げると丸い月が輝きながら浮かんでいる。

 綺麗な満月だった。

その下で、なぜ自分達がこんな目に合っているのか。
この場にいる全員がおそらく同じことを思っているのだろう。
「ほら、今日はとっとと寝るぞ。ここの朝は早いんだ。寝過ごして殺されるんじゃねえぞ」
そう言うと、タツヤはゴロンと横になり、すぐに寝息をたてはじめた。

この状況でよく寝れるなと、感心半分、呆れ半分に思っていると、その隣に座っていたはずのレイカもいつの間にか横になり小さく丸まって眠っていた。
(まるで猫みたいだ)
そっとレイカを覗き込むと、その手にはしっかりとナイフが握られていた。
うっかり近づくと刺されそうだ。

彼は仰向けに寝転んだ。
 静かな空間で聞こえるのは風の音と微かな唸り声。
目を閉じてみたが、唸り声や気配が気になって、目を開けずにはいられない。
彼は刺された腹にそっと手を当て、この空間とはまるで対照的な穏やかな夜空を見上げていた。
無数の星たちが彼らを見下ろす。
(俺は一体どうなるんだ)
眠れないまま、一日目の夜は更けていった。

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