《MUMEI》 それを受け取りながらユウゴは首を傾げた。 「こんなの、どっから持ってきたんだ?」 「そんなの、いくらでも方法があるだろ。買うとか、盗むとか」 「ふーん。盗んだのか」 ユウゴは納得して頷いた。 「いや、買ったかもしれないだろ」 「盗んだんだろ」 ユウゴが言うと、ケンイチは「まあ、そうだけど」と口を閉ざした。 考えてみればユウゴを追ってくる者たちは一様に武器を持っている。 その気になれば盗むことなど造作もないことだろう。 現に、ユウゴが持っているこの銃も敵から奪ったものだ。 「まあ、いい。とりあえず全員服ぐらい変えた方がいいな」 言いながらユウゴは織田を見た。 彼は小さく頷く。 「ここから奴らのいる街まで少し距離があるからな。馬鹿正直にレンタカーを借りるわけにもいかないし、人目を避けることはできない」 「ああ、少しでも見た目の印象を変えた方がいい」 二人が話していると、突然ケンイチが勢いよく手を挙げた。 「なんだよ?」 「服買うんだったら、俺いいとこ知ってるぜ」 「……まさか常連の店とか言わないよな」 ため息混じりに言うユウゴに、ケンイチは不満そうに表情を歪めた。 「俺だってそんな馬鹿じゃねえよ。一度も行ったことはない。けど、いつか行ってみたかったんだ。大丈夫。店は裏通りにあるし、今日は平日だから人も少ないし」 力を込めて言うケンイチにユウゴは「じゃ、そこ行くか」と頷いてみせる。 「いいよな?」 一応織田にも確認してみるが、彼は無言で頷いただけだった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |