《MUMEI》

ユウゴと織田はご機嫌なケンイチに連れられ、ショップが立ち並ぶ通りにたどり着いた。
そこには大勢の若者が行き交っている。
「……おい、どこが大丈夫なんだよ」
ユウゴが低い声で言うとケンイチは「まあ、ここはしょうがないじゃん」と笑う。
「これでも少ないほうだぜ? 休日なんてありえねえぐらいの人が集まるし」
悪びれる様子のないケンイチにユウゴはため息をついた。
ケンイチとユウゴはともかく、織田だけはなぜかこの場の雰囲気から浮いて見えてしまう。
早く店に入った方がよさそうだ。
「で、その店はどこだよ」
「ああ、それはこっち」
言ってケンイチは人の列を横切り、細い横道へと入った。
そこは裏通りなのだろう。
さっきの場所とは打って変わって人の数が少ない。
「ほらな? ここは人少ないだろ」
「ああ、まあな」
ユウゴが頷くと満足そうにケンイチは笑みを浮かべ、一つの店の前で立ち止まった。
「ここだよ」
「ここ?」
三人の前には小さな店舗が建っていた。
古そうな外観の店の中からは陽気な音楽が聞こえてくる。
窓から中の様子を窺うが、客の姿は見当たらなかった。
「さ、入ろうぜ」
楽しそうな表情でケンイチは言うと店の中へと入って行った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫