《MUMEI》
鍋を囲んで
忍が適当に買ってきた肉が、かなりいい牛肉だったから、今日はすき焼きになった。


「男四人で鍋って変だけど、綺麗どころいるし、このメンバーならありだよな」


仲村さんが持ってきたビールを飲みながら、屋代さんは上機嫌だった。


「ちょ、くっつくなよ、食べづらい」

「じゃあ、食べさせてやるよ、ほら、あーんして?」


二人の関係を知っているからだろうか。


それとも、俺と忍が恋人同士だと思っているからだろうか。


「わ、わかったよ」


照れながら、屋代さんの『あーん』に合わせるように仲村さんは口を開け、肉を食べた。


(甘い雰囲気だな…)


そんな事を思っていたら、不意に忍と目が合った。


「…」


忍が、無言で口を開けた。


(…食べさせろと?)


俺は、気付かないフリをしようとしたが


後が怖くてできなかった。


(明日は、三者面談だしな)


結局、忍の口に肉をはこんだ俺を見て


「ラブラブだね」

「…だな」


目の前の本物の恋人同士がそう言って肩を抱き合い


「ですよ」


肉を飲み込んだ忍は、強引に俺の肩を抱いた。

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