《MUMEI》
反撃 1
「何?」
レイカが振り返る。
「これ」
彼が見せたのは黒光りした一丁の銃だった。
「あいつらの?」
「そう。後ろに乗ってた奴放り出すとき落としたみたいだ」
「いよーし。そいつでヘリを撃ち落とせ!」
タツヤは必死に攻撃を避けながら言った。
顔は汗びっしょりだ。
「無茶言うな。銃なんて使ったことないのに」
「あたしがやる。貸して」
レイカが手を出した。
「でも…」
「このまま死にたい?ほら、早く」
迷う彼にレイカは冷たく言い放ち、銃を受け取った。
「撃てるのか?」
タツヤがチラっと横目でレイカを見た。
「さあ。とにかくやってみる。タツヤは出来るだけ揺れないように、でも絶対撃たれないように、そしてあたしがヘリを狙いやすいスピードで走って」
レイカはそう言って窓を開ける。
「ったく、このお嬢さんは、難しい注文を簡単そうに……」
タツヤは苦笑しながら、それでもなんとか要望に応えようとする。
「それから、あんた。落ちないように足、押さえてて。言っとくけど、変なとこ触ったら殺す」
おそらく、本気だろうと思われる言葉を受け止め、彼は助手席の後ろから手を回し、両手でレイカの足を持つ。
それを確認してレイカは、窓の外へ乗り出した。
ヘリは今度はレイカを狙って、銃弾を撃ち込んでくる。
レイカは間一髪のところで車の中へ引っ込んだ。
スレスレに銃弾が通り過ぎる。
「やっぱ、やめたほうが」
彼の言葉を無視して大きく息を吐くと、彼女はもう一度身を乗り出した。
タツヤはもう話す余裕もないようだ。
レイカは身を乗り出したと同時に銃をヘリに向かって構え、引き金を引いた。

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