《MUMEI》

時計の秒針が時を刻む小さな音だけが、病室に響いていた…。




『…のぅ猪俣…』



柳沢は突然、口を開いた。



『…儂がお前に跡目を譲らなかったのは……何故か分かるか…?』



猪俣は柳沢の思いがけない問い掛けに、暫し呆気に取られた。




『…いえ……私が若輩者で………。』



そしてとっさに謙遜の返事を口にするも、直ぐに嫌味に当たると思い止まり言葉を飲み込んだ…。

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