《MUMEI》
闇の先の不安
どこまでも続く先の見えない闇は、長く緩いカーブを描いている。
「……長いな」
なんとなく緊張した空気の中、タツヤが口を開いた。
「暗いし、長いし、やっぱしなんか出るんじゃね?」
彼は手に変な汗を掻いているのを感じた。
「幽霊とか?」
レイカは彼の言葉を鼻で笑い飛ばした。
「今、心配するべきは幽霊じゃなくて、出口に奴らが待ち伏せしてないかってこと」
冷静な口調で彼女は続ける。
タツヤは頷いた。
「確かにな。前と後ろから来られたらもっとやばいよな。逃げ場ないし」
「…嫌なこと言うなよ」
「ついでにやばいことがもう一つ」
タツヤがわざと軽い調子で言った。
「なんだよ?」
「ガソリン。もうないみたい」
「マジで?」
彼はメーターを覗き込んだ。
確かに残量はほとんどない。
「どっちにしても、この車でずっと逃げ続けるのは無理」
「なんでだよ?」
馬鹿にしたような口調で言うレイカを、彼は軽く睨んだ。
しかし彼女はまるで気にしていない。
「こんな車で町を走ったら、奴らじゃなくて警察に捕まる」
確かに、フロントガラスは無くなり、ミラーは折られ、トランク部分に銃弾の痕がある車なんて怪しいにも程がある。
「いいじゃん。それで警察に助けてもらえるだろ」
「そう?逆に捕まりそうだけど。血のついた服、ナイフ、ついでに銃もある」
レイカはナイフと銃を両手に持って彼に見せるように上に持ち上げた。
「捨てろよ!そんなの。銃だってもう弾ないだろ」
「いやいやいや、安全だと分かるまで武器は持っといた方がいいんじゃね?銃は弾なくても脅しにはなるし。今からどうなるかわからないんだ」
「どういう意味だよ?」
彼の質問に、タツヤは少し考えるように間を置いて答えた。
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