《MUMEI》

『そうではない……。』



柳沢は深く息を吸い、最期の命を削るように猪俣に向き合った。



『鶴見一家は昔から弱きを助け……人の道に外れる生業(シャブや売春)を戒めてきた…


…儂も先代から一家を引き継いでからは、その家訓を死ぬ気で守ってきたつもりじゃ…


…だがのぅ…時代の流れっちゅうモンは恐ろしいものじゃ…


…儂に先見の目が無いばかりに、ここまで一家を衰えさせてしまった…


猪俣よ……鶴見一家は儂の代で終わりにする積もりだったのじゃよ…


…お前が一家を継げば、堅くなに家訓を守ろうとするじゃろう…。


お前は家訓に縛られず、お前のやり方で子分達を導けばよい…。


……そう考えたのじゃ…。』

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