《MUMEI》
推理
「奴らはどう考えても普通じゃない。
目的はさっぱりだけど、こんな場所にあんなもの作って、銃どころか機関銃装備したヘリまで持ってやがる。
そんで、銀行にも手が回ってる。
ヤクザか何か分からないけど、かなりの力持ってることは確かだ。最悪、警察関係にも奴らの仲間がいるかも…」
いつになく真剣なタツヤに彼は不安な視線を投げ掛ける。
「だね。町に戻ってもどこに奴らの仲間がいるかわからない」
その不安に追いうちをかけるように、レイカも同意して頷く。
「でも、たった三人をしつこく追ってきたりしないんじゃ?」
「追っては来なくても、殺しに来るかもね」
「だな。それこそ映画のように町中で狙撃されたり?」
なぜか息ピッタリなレイカとタツヤをうらめしげに交互に見ながら、彼は大きく息を吐いた。
「えー?じゃあ、どうすんだよ?町に帰ったってあの中と変わりないじゃん。
いや、むしろどっから狙われてるのかわからない分、やばくなった感じ?俺は今まで通り、ただ普通に暮らしたいんだよ」
「そりゃ俺だってそうだっつーに」
「ま、ここでウダウダ言っても、結局後のことは奴らの出方次第だね。ほら、もうすぐ出口」

レイカが指差した出口は、月明かりに照らされてぼんやり明るくなっている。
「あー、頼むから何もいるなよ!俺を家へ帰らせてくれ!」
彼は本気で手を合わせて祈る。
そんな彼をレイカは馬鹿にしたように、タツヤは面白そうにミラー越しに見た。
そして車は暗闇の中から晴れ渡った星空の下へと抜け出した。

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