《MUMEI》 あの時は 驚いたな──。 まさか そんな勝負を仕掛けてこられるなんて 思っていなかったから。 千羽鶴を 一晩で? 無茶苦茶だと── 僕は思った。 けれど 負ける訳には行かなくて。 楽勝だったんじゃないかって? いや 必死だったさ──。 千羽鶴なんて そうそう作るものじゃ無いしね。 家に帰ってすぐ── 僕は作業を始めた。 夕食を摂るのも忘れてだ。 ただ 珠季に勝つ為に。 何故 あんなにも必死になっていたのか── 今でも 不思議で仕方無い。 けれど── 意外と楽しかったんだ。 あいつを 驚かせてやろう── そう思って 僕は夢中になって鶴を折っていた。 前へ |次へ |
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