《MUMEI》
予想以上に早い展開
「思ったより早かったわね」


そう言って俺と入れ違いに教室に入った志貴と貴子さんは


(本当に話したのか?)


そう疑う位早かった。


「この後お時間あります?」


相変わらずギラギラした目で言う貴子さんを


「申し訳ありません。用事がありますので」


忍は慣れた様子でやんわり断った。


(こういう所は執事っぽいよな)


感心していると


「行くぞ」

「へ!?」


小声でいつもの口調になった忍に俺は引っ張られた。


「何処に?」

「挨拶」

「答えになってない」

「いいから。俺は忙しいんだ、さっさと済ませるぞ」


そう言って、忍が俺を車に押し込み向かった先は


…高山家、だった。


「お、おい、まさか…」

「先方には連絡してある」

「俺にもしろ!」

「忙しかった」

「だからって…」


ピンポーン


心の準備が整っていない俺の隣で忍がチャイムを鳴らした。


その後


自ら玄関に来た上機嫌の果穂さんに招き入れられ


大志さんが作った契約書に俺と忍のサインを入れた。


まだ一年あると思ったが、研修は来年…高校に通いながら出来る範囲で始まるらしい。

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