《MUMEI》

『だが率いる子分もおらんのでは、此も無駄じゃったの……。』



そう言って柳沢は葛折の遺言状を枕の下から取り出し、猪俣へ差し出した。



猪俣はそれを受け取り、開き見た。



すると………………



『これは……!?』



猪俣の目に熱いものがこみ上げてくる。



その遺言状には、鶴見一家の終焉と猪俣組の新興を告げる宣言文がしたためられていた。



『のぅ猪俣…』



『…はい…。』



『その…懐に…抱いている物を出せ……。』



柳沢は、常日頃から猪俣が肌身離さず持ち歩く、ある“物”を渡すよう要求した。

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