《MUMEI》

あの騒動の後

2人で保健室に行ったんだったな──。

余程怪我がひどかったのか

養護の先生が驚いていたっけ‥。

何かあったのか

と訊かれて‥

僕は咄嗟に

階段から落ちた──

なんて嘘をついた。

自分でも

あからさまな嘘をついてしまったと思った。

けれど

僕はそんな言い訳しか思い付かなかったんだ。

馬鹿だろう?

思い出すだけで笑える。

珠季なら──

もっと上手い嘘を思い付いたんだろうな──。

「‥?」

僕の手から

メロンパンが消えている。

「こらっ、それは僕の──」

「へっへ〜ん、取り返してみなっ」

「ふ‥ふざけるなっ、誰がそんな子ども染みた事──」

「じゃあアタシが食っちまうぞ?」

「なッ‥こら待てっ」

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