《MUMEI》

猪俣は促されるままに、背広の胸ポケットに偲ばせていた小さな包みを取り出す…。



『…親父…。』



『それを…渡せ…。』



猪俣は黙ってそれを柳沢に手渡した。



それは20年前…柳沢と親子の契りを交した「盃」だった。




『…よいか猪俣…


…一家を構えるのも男なら…


…愛する者の為に生きるのもまた男じゃ…


故に愛する者を失ったお前に残されたものが憎しみだけだとしても…


…それがお前を突き動かす唯一の力となるのならば…


…これがお前にしてやれる最後の親心だと思え…。』



柳沢は「盃」を握る手を胸元に置いた。

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