《MUMEI》
悶絶マシーン
鍋咲が反論した。
「何が退場や。強制的に昇天させたかどうかは、事件性の有無に関する重要事項やないか」
「出た、セクハラデカ!」
「だれがオランウータンや」
「言ってませーん」
「ほっとけゆうねん」
沙知は一人険しい表情。鍋咲は再び聞いた。
「沙知。これは男にはわからん感覚やから女に聞くんや。ヤらしい意味ちゃうぞ」
「わかってます」
「女は惚れた男に抱かれて初めて感じるもんやろ。マシーンでイクもんか?」
「うわあ、露骨」
「おまえに聞いとらん」
沙知は厳しい口調で答えた。
「感じたら、負けだと思います」
「そうやろ?」
「鍋さん笑顔はやめましょう」赤山法子が口を挟む。
岡松悠二が言った。
「課長。でも膣内洗浄機なんて聞いたことありませんよ」
「そうだな」
「その機械を借りられませんかね?」
「借りてどうする?」
皆一瞬考えた。まさか婦人警官に体験してもらうわけにはいかない。
そこへ星巻夏実が登場。
「あっ、会議ですか。失礼しました」
「待て夏実」
「何ですか鍋さん?」
「今若い女の意見を聞きたいんや」
「あっ、そういう事件なんですか?」
「若い女一人しかおらんから」
「殺す」法子が拳を見せる。
「どっちと名前言う前に敗北宣言か?」
「黙りなさい」
鍋咲は自分の隣のイスを叩いた。
「ここすわれ夏実」
「はあ」
夏実は赤山法子の隣にすわった。
「何でやねん」
「そりゃあ、危険なオッサンの隣は怖いでしょう」
「だれがオッサンや。オッサン言うな!」
話が前に進まない。
「まじめに話そう」有島が言った。
「まじめな質問や。夏実。若い女性はな。好きでもない男に攻められても感じてしまうもんか?」
「いきなりかい?」法子が睨む。
「どうや夏実?」
夏実は前髪をいじると、俯いた。
「あたしは、経験が乏しいから、そういうことは…」
「またまたあ。夏実、その足首は男を知らない足首とちゃうよ」
「セクハラですよ!」夏実が怒った。
赤山法子も前髪をいじる。
「私も、経験が乏しくて…」
「聞かんでもわかるよ」
「いつか殺す」
有島がまた言った。
「話が前に進まない。今からギャグ禁止だ」
「ギャグじゃないんですけど」法子がふくれた。
「課長。院長を任意で引っ張れないですかね?」岡松がまともな意見を述べる。
「逃げられそうだな。何しろ体に触ってないんだから」
有島は沙知を見ると、口もとを緩めた。
「沙知。オレも基本的な質問をしてもいいか?」
「どうぞ」
「その道のプロがさあ。女を悶え狂わせる悶絶マシーンを研究・開発した場合、どんなに理性やプライドが高い女でも、落とされちゃうんじゃないか?」
「うわあ、さすがは課長」
法子は腕組みすると、深く頷いた。
「毎日怪しい動画を見てるだけのことはある」
「バカ、あれは押収物だ。見なきゃいけねんだよ」
沙知が有島の質問に答えた。
「そうですね。もし、課長の推理が正しければ、院長を逮捕できますね」
「沙知でものたうち回るか?」
「鍋さん!」
沙知と夏実が同時に睨んだ。
「冗談やないか」
「鍋さんの発言からは犯罪に対する怒りが感じられないんですよ」法子が責める。
「じゃかしい」
夏実も呆れる。
「男の警察官がこれでは困ります。女性を狙った卑劣な犯罪はなくなりません」
「確かに女性陣の言う通りかもしれませんよ。赤山さんたちが連れて来た犯人を、我々が同情して釈放しちゃうかもしれません」
「ガハハハハハ!」
鍋咲と岡松が爆笑。沙知は机を叩いた。
バン!
「わあ!」
「陣中に戯れ言なしですよ」沙知が睨む。
「そうや、陣中にざれごとなしや。不謹慎やぞ、淳平」
「何で僕が。何も言ってませんよ」
岡松が発言する。
「課長。やはり、婦人警官に、クリニックへ行ってもらうしかないですかね」
婦人警官と聞いて、皆一斉に夏実を見た。
「ちょっと待ってください!」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫