《MUMEI》 囮慌てる夏実を沙知が助けた。 「婦警にそんなことさせません」 すると、赤山法子が机を叩く。 「仕方ない。私がやりましょう」 「赤山さんが?」若い福嶋淳平が驚いた。 「私もやるときはやるよ。課長。囮捜査、私にやらせてください。見事証拠を掴んでみせます」 「そいつは無理だ」 「なぜです?」 「たぶん、美女しか狙わない」 「なるほど、さすが課長、深いってバカヤロー!」 法子は本気で怒った。 「おまーらいい加減にしろよな。法を遵守すべき警察官が、自らパワハラとセクハラのWインパクト炸裂させてどうするんですか!」 「人権侵害も入ってますよ」 加勢した淳平に法子が絡む。 「あんたに言われると、私動物かなあって自信なくしちゃうんだよね」 「ハハハ!」 「笑い過ぎだよおめーはよう」 このままでは会議で一日が潰れる。沙知は静かに、しかし力強く言った。 「わかりました。あたしがやります」 「え?」 「やってくれるか沙知」 バタンと大袈裟にこけた法子は、有島に抗議した。 「課長、普通は、沙知にそんな危険な仕事はさせられないってセリフが来るでしょう。ハードボイルド小説の読み過ぎですよ」 「うるさい」 「恋愛小説の読まな過ぎ」 「黙れ」 「動画の見過ぎ」 「やかましい!」 すると、鍋咲が真顔で意見を語る。 「沙知一人じゃ危険やから、ボディガードが必要やな」 「鍋さんが珍しくまともな発言」 「黙らんかい」 「そうだな。フィアンセ役が必要だ。待合室で待っているのは、家族か恋人が自然だろう」 「ここはやはり、課長が安心ですね」岡松が言った。 「オレもそうしたいところだが、オレの場合、どっから見ても刑事だろ?」 一瞬の静寂。 「ヤクザや」 「そういう鍋さんこそ、悪徳商法の幹部にしか見えないぞ」 「どんなや」 醜い争い。 「岡松さんは不倫にしか見えないしな」 「ちょっと待ってくださいよ課長。親子に見えるならわかるけど、不倫て何ですか?」 「じゃあ、年も近いし淳平が適任か」法子が言った。 「難しい仕事だけど、大丈夫?」沙知が聞く。 「任せてください」 「頼りにならんなあ。心配や」 「何言ってるんですか。必ず泉さんを守りますよ」 「お願いね」沙知は笑顔で福嶋淳平の肩を叩いた。 「沙知。危険な任務だが頼む」 「あたしが適任だと思います。ギリギリまで我慢して、白か黒かハッキリさせます」 「無理は絶対にするな」 「はい」 捜査会議はようやく終わった。沙知と淳平は入念な打ち合わせをしてから、見冬院長がいるクリニックへ潜入。 二人ともTシャツにジーンズ姿で、若いカップルを演じた。 沙知が、デリケートゾーンが痒いと言うと、3番で女医と看護師が検査。加藤るりの言う通りだった。 そして、淳平と待合室で待機。 「泉沙知さん。1番の診察室にお入りください」 沙知は立ち上がると、淳平を見た。 「お願いね」 「任せてください」両手でガッツポーズ。 沙知は診察室のドアを開けて中に入った。 「よろしくお願いします」 「どうぞ」 沙知はイスにすわった。 「デリケートゾーンが痒いけど、検査してみたら何の異常もなし。ちょっと洗浄してみましょうかね」 「あ、はい」 「では、下着姿になってください」 「はい」 沙知は立ち上がると、服を脱いで籠の中に入れた。水色のブラとショーツ。見冬院長は、チラッと見たが、すぐに目をそらせた。 「では、ベッドに仰向けに寝てください」 「はい」 沙知は緊張した顔で寝た。 「普通は医師が膣内洗浄を行うんですけどね。今新開発された洗浄機があるんです」 「洗浄機?」 見冬はマシーンを持ってきた。 「これは?」 「画期的な膣内洗浄機です。女性患者が男性医師に恥ずかしいところを見られたり、直接触られる心配がないんです」 「へえ…」 院長の見冬は、沙知の下半身に機械を装着。さすがの彼女も緊張した。 前へ |次へ |
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