《MUMEI》
彼らの作戦
「ひょっとして立川もこれを真に受けて?」
「さあな、それはわかんねえよ。それで、この依頼者と連絡する方法はないのか?」
 タツヤがマウスを動かした。
 画面の下に、付け加えて何か書かれている。
「これは、メアド?」
「みたいだな。なんか送ってみるか?」
彼がアドレスをクリックする。
「うまくすれば、奴らの正体がわかるかも、か」
「でも、危険が大きい」
レイカの言葉に沈黙が広がる。
「……こうしてても仕方ない。メール送ろうぜ」
 タツヤの決断に彼はキーボードに手をやる。
「なんて送る?」
「そうだな。…多分、具体的なこと聞いても答えは返ってこないよな」
「三人の居場所を知っている」
悩むタツヤの横でレイカが口を開いた。
「え?」
「情報をメールで聞き出すのは無理。だったら直接会ってみたら?」
「直接って、そんなの危険過ぎるだろ」
何言ってんだと彼は呆れた表情でレイカを見た。
しかし、タツヤは納得したように頷いている。
「奴らの一人を捕まえて直接情報を聞き出せば、手っ取り早いな」
「えぇ?本気かよ?」
「任せろ、大丈夫だ。俺、そういうの得意だし。相手の正体もわからない、誰から逃げればいいかわからない状況よりマシになるぜ?」

そういうのが得意とは過去に経験でもあるのだろうか。
タツヤならやりかねない。
「まあ、確かにそうなんだけど……分かったよ」
彼は一つ溜め息をして、文字を打ち始めた。
「三人の居場所を知っている……次は?」
「直接会って、契約したい」
レイカの冷静な声が続ける。
「おいおい。ストレートだな」
「下手なことを言うと怪しまれる」
「それで?」
「とりあえずこれで送ってみて」
彼は送信ボタンをクリックする。
「…返事くるかな?」
「くる。多分、すぐにね」
なぜか確信に満ちた口調でレイカが応えた。

……数分後。

「ほんとにきた…」
届いた返事を彼が開く。
『今夜十時に指定する場所へ来い』とのことだった。
「…なんか、やけにあっさり受けたな」
「罠かもね」
「罠でもいいじゃねえか。それにこの指定場所、ファミレスじゃん。いくらなんでもこんなとこで派手なことしないだろ」
確かに夜十時なら客もまだ多いだろう。
「で?行くんだよな?」
彼が確認するように二人を見た。
「当然!!」
二人は同時に頷いた。

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