《MUMEI》
Jデリー
 振り向くと、ダボッとした服を着た、みるからにガラの悪そうな少年が姿勢悪く立っていた。
 その後ろにはニヤニヤと笑いを浮かべながら、十数人の同じような恰好をした少年たちが武器を持って集まっている。
「いや〜探しましたよ〜。タツヤさ〜ん」
 先頭に立つ少年がなんともいえない癖のある口調で言った。

彼とレイカがタツヤを見る。タツヤは微妙に緊張した様子で笑みを浮かべていた。
「いよぉ、リュウジじゃねえか。何やってんだ?手下そんなに引き連れて」
「ゲームっすよ〜」
「へえ、ゲーム?」
「…おい、誰だよ?」
小声で彼が聞く。
しかし、タツヤが答えるより早く、リュウジが口を出した。
「これは、ご挨拶が遅れまして。Jデリーのリュウジで〜す。よろしく〜」
リュウジはわざとらしく礼をする。
「Jデリー?」
彼は問うようにタツヤに視線を送る。
「確か、ここらへんを仕切ってる少年ギャンググループ」
レイカがポソっと応える。
「そ。俺が昔作ったグループ」
タツヤが付け足す。
「はあ?お前は一体何やってたんだよ」
「……それで?一体何のゲームだよ?」
彼を無視して、タツヤは聞いた。
するとリュウジは、三人に向かって拳を突き出し、親指を下に向けた。
「あんたらを〜、殺す、ゲーム?みたいな?」
「なっ!?」
「つ〜わけで〜…行け!」
 リュウジの号令に、後ろにいた連中がそれぞれに雄叫びを上げながら押し寄せて来た。
「逃げるぞ!」
タツヤは二人の背中をバンと叩いて走り出した。

それを合図に彼とレイカも走り出す。
「おい!よくわかんねえけど、あれはお前の後輩ってことだろ!なんとかしろよ!!」
走りながら彼が怒鳴った。
後ろでは口々に何か叫びながら少年たちが追いかけて来ている。
「なんとかできるんならしてるっての!今のJデリーはリュウジのもんだから、俺が何言ったって聞かねえって。それにあの人数相手に、まともにケンカして勝てるわけねえし。あいつら意外と強えんだから」
タツヤが怒鳴り返す。
「だったらこれ使う?」
レイカが取り出したのは弾切れの拳銃。
「おお!そういやそんなのもあったな。脅しにはなるだろ。貸せ!」
タツヤはレイカから銃を受け取る。

「よし!俺が奴らを止めるから二人は先に行け!朝の公園で待ってろ」
言いながら、タツヤはスピードを緩めた。
二人は頷き、そのまま走り続ける。
「さて、と」
タツヤはそれを見送ると、立ち止まって銃を構えた。
 銃に気付いたJデリーのメンバー達はタツヤから距離をとって立ち止まった。
「おいおいおいおい。ま〜さか、銃持ってるなんて。か〜な〜り、やばくね?」
 そう言いながらリュウジは後ろの方からユラユラ出てきた。
「あいかわらずムカつく喋り方だなあ?リュウジ」
「タツヤさんも、あいかわらず仲間想いでいらっしゃる」
リュウジは馬鹿にしたような耳障りな笑い声を上げた。
「おい、お前もあのサイトを見て俺達を追ってるのか?」
タツヤは銃を構えたまま、リュウジを見据える。
「サイト〜?…はあ?何のことかな〜?なあ?」
 リュウジは周りのメンバーに向かって首を傾げる。
「じゃあ、なんで俺たちを狙う?思い当たるフシがないんだけどなあ?」
「だ〜か〜ら〜、ゲームだって」
「だ〜か〜ら〜、なんでそんなゲーム始めたのかって聞いてんだよ!!」
タツヤの怒鳴り声が辺りに響いた。

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