《MUMEI》
愛は会社を救う(84)
私は、ジャケットの内ポケットから、重ねて四つ折にしたA4版の紙片2枚を取り出した。
それは、土曜出勤した知子に依頼し、コピーしてもらった、あの書類だった。
オリジナルは、丸亀のデスクに立ててあるチューブファイルに、今も密かに綴られている。
そこには、本社から受け取ったファックスの一覧と、山下仁美がそれを整理した場所のリストが、事細かに記されていた。
いわば、通達文書のインデックスだ。
「ずいぶんと、手の込んだことをなさいましたね」
そう言う私を、丸亀が一瞥する。
その目はまるで、この世の全てを諦め切ったように虚ろだった。
「天網恢恢疎にして漏らさず…か」
降参だとでも言いたげなふうに首を横に振ると、丸亀はゆっくりと缶に口を付け、ゴクッ、ゴクッとビールを喉に流し込んだ。
そして、ようやく覚悟ができたかのように、フーッと大きく息を吐いた。

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