《MUMEI》
愛は会社を救う(85)
「なぜ、わかったんです?…そのインデックスの存在が」
力無い笑顔を浮かべながら、丸亀が私に訊ねる。
今ビールで湿したばかりだというのに、その唇はすでにもう白く乾いていた。
「ご自分のデスクは手当たり次第に探すあなたが、山下チーフのデスクでは、迷わず、すんなりと目的の資料を手に取られた。それが、何の目印も無い封筒だったにもかかわらず」
「そんなところを、見られていましたか」
「ええ。そして、その前に、一冊だけ真剣にご覧になっているファイルがありました。あの時あなたは、湯呑を倒したのさえお気付きにならなかった」
自慢げに謎解きを披露するのは、私にとって快いものではなかった。
しかし丸亀は、柔和な表情で私の言葉に聴き入っている。
長く続いた茶番から解放された、一種の安堵感からだろうか。
寛いだ表情にも見える彼の目の前に、私はもう一度、四つ折の紙片を差し出した。
「そこに綴ってあったのが、このインデックスです」

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