《MUMEI》

今は

現代国語の授業の最中。

珠季は

教科書を忘れて来たらしく──

僕は

彼女に教科書を見せてあげている。

前にも

こんな風に

2人で教科書を使っていた事があった。

けれど

かなりギクシャクしていたな──。

机をくっつける事すら

ためらっていた位だから。

「──おい、ページ捲るぞ‥?」

「ぁ、ぁぁ──すまない」

つい‥

ぼんやりしてしまっていた。

僕は

前よりも──

こんな風に

ぼんやりする事が多くなったような気がする。

彼女が僕に気持ちを伝えてくれて──

お互いに好きなんだと分かった後からだ。

もしかすると

これが‥

本来の僕──

なのかも知れないな──。

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