《MUMEI》

『…糞!…。』



猪俣が覗く視線の先で、兼松は小さく舌打ちしながら山札の返しを場に叩き付けていた。



―――…「松に鶴」



兼松が欲しい札は、ことごとく手中を素通りしてゆく。



役作りが進まない焦りと、桜庭の正体が猪俣かもしれないという不安から、兼松は見苦しく憤った。



〆華はそんな男を冷めた目で見下し、真綿でジワジワと締め上げるように文数を重ねてゆく。



…パシッ!



軽い音と共に「松に鶴」を頂戴する。




返しの札は…




――…「桐に鳳凰」だった。



兼松の顔から血の気が引いていった…。

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