《MUMEI》
スイッチオン!
院長の見冬は、魅力的な沙知の顔と体をチラチラと見る。
「では、下着を取ってください」
「はい」
沙知はショーツを脱いで枕もとに隠した。
「実はですねえ。先日、若い主婦がくすぐったいって暴れて、機械を途中で止めようとしたんですよ」
「はあ…」
「勝手にいじるのは危ないので、両手を固定させてください」
「固定?」
「大丈夫ですよ、自力で外せますから」
そう言うと見冬は、ベッドの手すりに付いているベルトを掴んだ。
「どうするんですか?」沙知が不安な顔色で聞く。
「心配しないでください」
沙知はバンザイの格好をすると、両手首をベルトで固定されてしまった。
力を入れたがほどけない。いよいよ怪しい。沙知は緊張しながらも、内心では確信した。やはり事件性を疑う必要はある。
見冬は無表情で沙知の足首も掴む。
「両足も固定します」
「両足もですか?」
両足もベルトで固定されてしまった。両手両足を拘束されて、完全に無抵抗の状態だ。
問題はマシーン。これが単なる膣内洗浄機か、それとも悪質な悶絶マシーンかは、体感してみないとわからない。
この診察室で叫べば、待合室の福嶋淳平まで声は届く。病院ぐるみの犯罪でない限り、悲鳴が聞こえれば、ほかのスタッフも駆けつけて来るだろう。
沙知は身構えた。
ブラを取られたら全裸。いくら下は機械で隠されているとはいえ、凄い緊迫感だ。沙知は見冬の出方を待った。
「では早速始めましょう」
「お願いします」
見冬は沙知のおなかに手を乗せると、さすった。
「え?」
「いい体してますね。刑事さん」
沙知は焦った。
「刑事?」
「とぼけても無駄ですよ」
見抜かれたか。敵は侮れない。医者の観察眼はやはり鋭い。
「私を逮捕しに来たのですか?」
「なぜあたしが刑事だと思うんですか?」
「刑事って、目してます」
そんなこと、意識したことはない。沙知は額に汗が滲む。
「いいでしょう。逮捕させてあげましょう。でもその前に、私の話を聞いてくれますか?」
「…ええ。聞きましょう」
見冬はマシーンを触る。
「これは膣内洗浄機ではありません。闇で流れている悶絶マシーンです」
あっさり白状した。沙知は驚いた。
「38万円で買いました」
「38万?」
「最初は、エッチな意地悪をされたがってる主婦がターゲットでした。こういう人は警察に言うわけがない。どこも悪くなくても来ますよ」
浅ましい、という顔をすると、沙知が一言呟いた。
「あなたは、医師失格ですね」
「免許剥奪ですか?」
「当然そうなるでしょう」
「刑事さん。話を聞いてくれるというのは嘘ですか?」
「わかったわ。続けて」
見冬は、沙知の体を無遠慮な視線でながめ回す。
「いけない主婦を喜ばせるだけでは、つまらなくなったんです。知的で、理性とプライドが高くて、上品な若い主婦に、エッチな意地悪をしたくなりました」
「なぜ?」
蔑んだ目を向ける沙知に、見冬も蔑んだ目で返した。
「なぜ…。愚問ですよ。理性の高い上品な女性が乱れてしまうから、興奮度が増します」
「なぜ?」沙知が睨む。
「趣味と実益を兼ねるのもきょうが最後です」
「え?」
「刑事さんはかわいらしい。最後の生贄に相応しい美人さんです」
沙知は厳しい目で見冬を見すえた。
「警察を舐めないで。あたしが一人で来たと思ってる?」
「お仲間の刑事さんなら、お昼寝中です」
「え?」沙知は慌てた。
「悲鳴を上げたら刑事さんも眠ってもらいますよ」
沙知は身じろぎした。見冬は悶絶マシーンを触る。
「待ちなさい!」
「待ちません。この悶絶マシーンは、クリトリスを弾きまくり、Gスポットを素早く探り当て、女の2つの弱点を同時に攻めます。昇天する確率は99パーセント。どうします。刑事さん」
「すぐに外しなさい!」
「生意気ですね。困らせてあげましょう」
「待ちなさい!」
スイッチを押された。

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