《MUMEI》

「えへへ〜さすが武だね、自分で着られるんだ〜格好いいッ///」
「そりゃ着れるだろ、着物の国の人間だぜ♪」

と言うよりも子供の頃から親父の舎弟が面倒を見てくれたんだがそれが嫌で、たまに俺と会ってくれた親父が浴衣なんかを着せてくれたのが嬉しくて、それを覚えていたのかもしれない。

かなたが俺の浴衣の裾から指を差し込んできたりして、俺にちょっかいを出してきた。

「くすぐってぇな///」
「これ帯とか、どうなってるの?」
「そういやお前らこの浴衣自分で着たのか?」

コイツらを見てみるとかなたの帯の後ろがちゃんと可愛いリボンになっていて、はるかの方も見てみると綺麗に着こなしていたんでコイツらだけで着れるのか…と、ふと疑問に思った。

「あのね、これはね今日克哉にいちゃの恋人さんの家に行ってコレ着せてもらったんだぁ〜///」
「えッ!お前らその為にわざわざ行ったのかよ」

ちょっと前に一度だけ、克哉さんに呼ばれてその人の部屋にはるかとかなたと一緒にお邪魔した事があった。

その人はこの時間はバイトに出てるからってんで克哉さんが夕飯の用意をしていて、それで一緒に食事でもどうだという事で俺らが呼ばれて行ったんたんだっけな。

そこは一人暮らしの部屋なのにベランダには花がいっぱいあって、テーブルにもキッチンにも綺麗な花が飾ってあって、到底男の一人暮らしの部屋には見えなかった。

でもそれ以外は生活をしている雰囲気が全然無くて、何も入ってない棚の上に液晶テレビとゲーム機が置いてあって、イスは申し訳程度に二脚あるだけだった。

隣の和室の襖を開けてみるとそこにもほとんど物が無くて、かなたが「畳だー!」と言ってはしゃいで畳の上をゴロゴロと転がっていても何にもぶつかる事も無いくらいだった。

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