《MUMEI》

「ココは日本のアパートメントだぞ、静かにしろ」
「は〜い」

克哉さんに注意されてようやく大人しくなったかなたは、俺らの手を引いて和室に連れてくると襖をそーっと閉めた。

「静かにしなきゃね」
「何でこっちに連れて来んだよ」
「えー何でって、禅だよ禅!」
「ワケわかんねぇよ…」

そう言うとかなたは畳の上で座禅の真似事をしながらムニャムニャと何かを唱えて自分の世界に浸り、はるかはそーっと押入を少しだけ開けると、その隙間に顔を突っ込んで中の様子を伺っていた。

(何してんだコイツら…)

二人に呆れながら俺もかなたの隣に座ってぼんやりしていると、玄関の開く音がしたので誰かが帰ってきたようだった。

「おかえりアキラ」

襖の向こうから何やら楽しそうな話し声が聞こえてくると同時に、双子は素早い動きで襖の方へ駆け寄ると、その隙間から向こうの様子を伺っていた。

俺も気になってその隙間から向こうの様子を覗いてみると、その人は隣の部屋に居る俺らに気付いていないようで、荷物をイスに置くと克哉さんと何か話しているようだった。

(何だ…別に普通じゃんか)

何を期待していたワケじゃないけど、やっぱり大人同士の恋愛ってどんなモンか見てみたい気持ちがあった。

それはこの双子達も同じようで、まだ諦めずにじーっと襖の向こうを覗き込んでいる。

「お前らいいかげんに…」

そう言って襖を開けようとした瞬間、かなたに足をギュッと捕まれて驚くと同時に向こうの部屋から仲の良さそうな声が聞こえてきた。

再び俺も黙って襖の隙間から向こうを覗いてみると、その人は克哉さんに抱きついて仲良さそうに何度もキスをしている姿が見えた。

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