《MUMEI》
夢見た《永遠》
僕は、そんな彼女を見て笑い、呟いた。

「俺はね、自分が一番可愛くて、自分の為なら他人を犠牲にしても胸が痛まない、酷いヤツなんだよ」

折原の瞳が、涙で潤み始めた。僕はシラけたような顔をして、彼女を見つめた。

「《アイツ》以外の女が泣く所見ても、何も感じないんだよね。可哀相、とも思わない」

折原は悔しそうに唇を噛み締め、俯いた。その柔らかな頬の上を、美しい涙がキラキラとこぼれ落ちていくのが見えた。
僕は、ゆっくり、瞬いた。

他の女なんか、眼中に無かった。
祥子だけが、全てだった。祥子が傍にいるなら、他には何も、いらなかった。


僕等の愛は本物で、永遠に続く絆なのだ、と。

あの、エタニティのネーミングのように。


−−でも。


「そんな俺のせいで、《アイツ》は…祥子は死んだんだ」


極普通の抑揚で話したので、折原は頭を持ち上げ、変な顔を僕へ向けた。僕は俯き、自分の手を見つめた。

僕は、小さく、呟いた…。



−−俺が、祥子を、殺した…。








祥子は、心をなくしはじめていた。

僕の顔を見ても、一瞬、誰だか分からないという顔をするのだ。
確実に着実に、うつ病は彼女の精神を蝕んでいた。


食べ物でストレスを解消出来なくなった祥子は、いつの頃からか、自傷行為に走るようになった。


生々しい手首の傷を見つける度、僕は祥子に詰め寄った。こんなことは止めるように諭す僕に、祥子は虚ろな表情を浮かべ、首を振って答えた。

「私は、もう、駄目なの。解放して。お願い。私をここから…放して…たすけて。もう、いいでしょう?」

いつも、支離滅裂な返事ばかりだった。だが、その言葉の端々にあった、『解放』という単語が、僕の頭から離れなかった。

取り乱す祥子を、僕はいつも力任せに抱きすくめた。そのまま、寝室のベッドに連れていき、キスをする。舌を絡ませ、そして服を脱がしていく…。

最初、彼女は抵抗していたが、だんだんと躯に押し寄せてくる快楽に、次第に喘ぎはじめるのだ。


祥子を、安心させるために。

だから彼女を、半ば強引に抱いた。

けれど、頭の片隅に。

今の祥子の状態であれば、簡単に躯を赦すのではないか、と。

浅はかで愚かな考えが、あった。


僕は、相変わらず、祥子を求めていた。

それを他の女に、求めなくなってからは、
その欲望の矛先は、自我を亡くした祥子に向けられた。


僕が、彼女の躯の一番敏感な部分に唇を寄せ、執拗に舌を動かすと、祥子は何かを堪えるように眉を歪ませ、美しく長い指でシーツを握りしめた。

「やめて、やめて」

途切れ途切れに彼女が言う。その様に興奮した僕は、さらに指を使い、彼女の躯を攻め立てた。
祥子は少し短い悲鳴を上げて、僕の腕を掴んで行為を止めようとした。だが、そんなことで、僕は引かない。

徹底的に彼女の躯を手や唇を使って、ほしいままにした。

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