《MUMEI》
夜
部屋には窓もないので今が何時なのかわからない。
あれからレイカが姿を見せることはなかった。
食べ終わった食器は、黒スーツの男が何も言わずに下げていった。
何をするでもなくただ時が過ぎるのを待っている。
何かをしたいのに何もできない。
なんとも、もどかしい時間だった。
「なあ。お前は明日どうすんだ?」
ベッドに仰向けになったタツヤが言った。
「どうするって、わかんねえよ。けど、どうにかして他の道を見つけたいよな」
同じくベッドに寝転んで、彼は応えた。
「だよな。あいつらの用意した選択肢は選びたくないよな。まあ、明日何するかわかんねえから、選べる余裕が俺達にあるのかどうかもわかんねえけど」
「ああ。絶対まともなテストじゃないだろうな」
「だろうなあ。あーあ。なんで俺達がこんな目に遭わなきゃいけないんだろうな。
国のお偉いさんが黒幕じゃあ、逃げるに逃げれないし。俺の人生、マジついてねえ」
大きく息を吐く音が聞こえる。
「フリーターとか、無職な奴とか、全員あそこに連れて行かれたらさ、さすがに世間が騒ぐと思わねえか?」
「まあな。けど騒ぎ出す前に、情報を握り潰すんじゃね?」
「そっか。あいつらはそういう権力持ってんだよな。
一体どうなってんだ?この国は?」
「まったくだな。あ!海外逃亡ってのはどうよ?別の国に逃げたらあいつらだって追ってこれねえだろ?」
「普通に無理だろ。金もないし、パスポートも持ってない。それに飛行機や船に乗る前に見つかって捕まると思うぞ?」
「………だな」
二人は同時に溜め息をついた。
「ほんっとについてないな、俺達」
と、その時、突然部屋の電気が消えた。
「なんだ?消灯か?」
「……みたいだな」
次に電気が点いたとき、二人の運命は決まる。
大丈夫だ。
今までだってなんとかなってきたんだ。
きっと明日も何とかなる。
いや、何とかなってもらわないと困る。
暗闇の中で一人意気込んでいると、その心の声に答えるかのように、タツヤが「なんとかなるよな」とボソッと呟いた。
何時間たったのかわからない頃、やはり突然に電気が点いた。
そして、朝食を与えられることもなく、彼らは男たちに連れられてエレベーターに乗り込んだ。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫