《MUMEI》
ワンパターン
一瞬、意識を失ったのか、ユウゴはゆっくり目を開いた。

うっすら茜色に染まった空がきれいに広がっている。
白い雲がゆっくり流れる。
しかし、吹き抜ける風はひどく焦げ臭い。
火薬の臭いも混じっている。

「いったぁ」
すぐ隣からユキナの声が聞こえてきた。
体中が痛い。
しかし、まだ二人とも命がある。
「俺たちって……」
「ゴキブリ並にしぶといな」
頭上から声がした。

ユウゴは頭をのけ反らせて、頭上を見た。

草野が眼鏡をズリ上げながらユウゴとユキナを見下ろしている。
「この…!ってぇ」
ガバッと勢いよく起き上がった瞬間、左腕に激痛が走った。
見ると、二の腕から肘下にかけて大きく裂けて血が流れでていた。

「ま、さすがに無傷じゃないみたいだけど」
草野の言葉を聞き流しながら、ユウゴはユキナを助け起こした。
ユキナは痛そうに顔をしかめて、右腹部を押さえた。
「大丈夫か?」
「ん。多分」
力無く、ユキナは頷いた。
「……仲がいいんだな。こんな状況で女連れとは、なめてんのか?」
目をカッと見開いた草野が、再び鞄から何かを取り出した。

今度取り出したのは、さっきとは筒の色が違うダイナマイト。
「ワンパターンな奴だな。つまんねえよ。友達いないだろ」
痛みを我慢しながら、ユウゴは言った。
あまりの痛さに、腕が痺れてきた。
「友達?そんなくだらないもの、いらない」
草野は歪んだ笑みを浮かべて、ライターに火をつけた。
「ほんっと、ワンパターンな男。サイテー」
横で暗い表情をしたユキナがボソッと呟いた。

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