《MUMEI》
頼・出発
冬休み初日。


[それじゃ、祐也! 行ってくるね!]

[あぁ、頑張れよ]

[じゃあ、励ましのキスを…]

[とっとと行け!]


(目立つんだよ!)


俺と頼は、駅のホームで英語でやりとりをしていたから、かなり注目されていた。


俺は、口をタコのようにする頼を、無理矢理車内に押し込んだ。


出発までまだ時間に余裕があったが、俺はもう頼のテンションとセクハラに耐えられなかった。


そんな頼は、窓際の席に座ると、ガラス越しに俺にウインクしていた。


これから頼は、終点まで行き


そこから空港に向かい


アメリカに


エイミーに会いに行くのだ。


昨夜、頼は志穂さんと話した。


志穂さんは、エイミーの奇妙な行動と気持ちを、志穂さんなりに推測し、頼に伝えた。


以前志穂さんが言っていた通り、それを聞いた頼は、いてもたってもいられなくなり


翌日


つまり今日、始発で出発する。


一応、相談にのってしまったし、出発時刻も教えられた俺は、半強制的に、見送りに来ていた。


そして、頼は発車と同時に俺に投げキッスをして、旅立っていった。

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