《MUMEI》

『あや』という女の名前を聞いて、静かに私の心の中のマグマが沸々と沸いてきたのを感じた。

悠也の元カノ。

きっと美人で若くて可愛いのだろう。
22,3歳くらいだろうか?

肌も弾力があって、張りがあって、綺麗だろう。

あたしにはないお金では買えない『若さ』を彼女は持っている。

美貌も真実の愛もみんな望めば簡単に掌に納めてしまう。
きっとそういう種類の女なんだろう。

 
高校生の時にもそんなクラスメイトがいた。美人で聡明で明るくて。
あたしとは、到底釣り合わない人種だ。

担任のエコひいきも友達からの羨望も格好いい彼氏も全部彼女は、持っていた。

休み時間は、いつも読書しているようなあたしとは、接点すら見いだせないだろう人物だ。


 胃の奥がぎゅうと狭くなって、呼吸が乱れてきた。首を絞められたように息が出来ない。

・・・悠也が欲しい。

あたしの中の心の闇がどす黒い黒煙を上げて燻っていくのを誰が止めれるのだろう。

・・悠也を自分の物にしたい。

欲しくて欲しくて堪らない。

悠也の首筋の静脈がトクントクンと波打つのを両手の指先に感じてゆく。

気が付くと満身の力で悠也の首を両手で締めていた。

「うっ・・く、苦
し・・い」
悠也の美しい顔が哀れな形相になる。

「ど、どう・・して?りさ・・・」

「楽にしてあげる。もう『アヤ』の幻想は見ないで済むじゃない」

そう言うと憑きものが落ちたようにふっきれたあたしがいた。

「手、離してっ、お願い・・、うっ、うぐ・・・」

悠也の悶絶顔がセクシーなので、あたしは少しだけ酔いしれて、それからひどく冷静にこの状態を楽しみたくなった。

鼠を追い詰めた猫のように愛するものを永遠に自分のものにする喜びを思うと鳥肌が立った。

「や、やめろっ・・・、くるしい・・離せっ・・・」

更に満身の力で両手を首に巻きつてて締め上げる。

ぼきっと鈍い音がした。
悠也がぐったりとして、目を閉じた。
唇が蒼白になっていく。

このまま永遠に私の者になればいい。

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