《MUMEI》 愛は会社を救う(88)「ところがその話が持ち上がって数か月後、山下クンの部下になるはずだった女子社員が2人、立て続けに産休に入ったんです。2人とも、採用は総合職でした」 その女子社員たちを辛らつに非難する口調が、当時、丸亀が感じた無念の大きさを生々しく物語っていた。 「バブル崩壊後少し経った頃で、労働条件は悪化し、社員一人当たりの負担もどんどん重くなっている時期でした。言ってはいけない事かもしれないが、彼女たちは、そこから体良く逃げた、そんな印象でした。その証拠に、延長してまで取った育児休暇が終わると同時に、2人ともあっさり退職したんですから」 そこまで言うと丸亀は、震える唇を強く噛んだ。昂ぶった感情が抑えきれなかったのだろう。 私は同情しながらも冷静に、話を核心に近付けていった。 「その2人が休んでいる間に、当時の経営陣が退陣に追い込まれていますね。それで山下さんの昇進も立ち消えになった」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |